日本の高齢社会に向けて、今できること

−高齢社会への切り札、ICT利活用−

−超高齢社会の到来と認知症"予防"−


なぜ今、認知症予防が必要なのか?

■65歳以上の5人に1人が認知症患者という日本の将来

日本における認知症の高齢者人口将来推計

 

 厚生労働省の推計によると、団塊の世代800万人が75歳以上の後期高齢者になる2025年には、認知症発症者数は730万人になる見込みです。予備軍を含めれば、その数、実に1,300万人もの数にのぼるとの試算が出ています。

つまり、65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症。

増えゆく認知症発症者に伴い、医療や介護を含む社会保障費が増⼤の⼀途をたどり、深刻化する認知症問題とあわせて、国家レベルの社会課題となっています。

■認知症対策が国家戦略に

−深刻化する認知症問題−

 日本はすでに5人に1人が65歳以上という超高齢社会を迎え、2035年には65歳以上が総人口に占める割合(高齢化率)が、

3人に1人に達すると推計されています。

 日本が初めて迎える高齢社会をどのようにして豊かにし、便利にするかをテーマに様々な分野で研究が進んでいます。科学技術の分野でも高齢社会を見据えた取り組みがスタートしており、世界の有史上で存在しえなかったICT(情報通信技術)を生活に役立てよう!という動きが主流となっています。超高齢社会におけるICT利活用の推進は、総務省を主体に国も力を入れています。


 ICT利活用の一例として、遠隔地に暮らす高齢者と医者をインターネットを介して結びつけ、地域医療を支援する試みはすでに実用化されています。また高齢者による交通事故の増加が社会問題となっていますが、人に代わり機械が車を自動操作する技術開発には、大きな期待が寄せられています。


 ICTは意識するとしないとにかかわらず、誰にとっても身近な存在となっており、豊かで便利な生活を実現しています。長年、高齢者の方々にICT利活用をお伝えしてきたわたくしどもが実感していることは、新しい技術が次々に生み出されても、特に高齢社会の高齢者への利活用は、自然と進むものではない!ということです。


 ICTを使いこなせない人、特に高齢者は、ICTがもたらす豊さや便利さからますます取り残されているのが現状です。つまり、ICTと高齢者の間にはまだまだ大きな溝が横たわっているのです。

 

 

 厚生労働省「認知症予防・支援マニュアル」を始め、さまざまな調査研究から「どうすれば認知症になりにくいか」ということが少しずつわかってきています。認知症予防の対策は、大きく2つに分類され、1)認知症になりにくい生活習慣を行うもの、2)認知症発症時に低下する3つの認知機能を鍛えるものとがあります。これらを習慣化して長く続けることで、認知症を発症することなく過ごせたり、認知症になる時期を遅らせたりできる可能性が高まります。

-厚労省が紹介する認知症予防プログラム-

 同左の「認知症予防・支援マニュアル」作成に携わった、認知症予防研究の第一人者である東京大学 高齢社会総合研究機構 特任研究員の矢冨直美氏らにより、認知症予防の意識向上と認知症になりにくい生活習慣を身につけることを目的とした『地域型認知症予防プログラム』が提唱されています。

 同プログラムは、認知症予防に関する地域支援事業として、「認知症予防・支援マニュアル」にて紹介されています。健康な人もMCIをもつ人も区別することなく、地域全体の高齢者を対象として事業を行うものであり、ポピュレーション・アプローチという方法を採用しています。

同プログラムは、MCIの時期に低下しやすい脳の認知機能(1)エピソード記憶(2)注意分割機能(3)計画力を鍛える活動を通して、グループワーク形式で参加者の自主性を促しながら、認知症になりにくい生活習慣を身につけることを目的にしています。「有酸素運動」「知的活動」「対人的接触頻度」が認知症発症の抑制に大きく関わっているという知見に基づき、運動プログラム(ウォーキング)と知的活動プログラム(パソコン、旅行、料理)の4つが提唱されています。

『地域型認知症予防プログラム』は、全国の自治体での導入が進む反面、課題も出てきています。これまで自治体などで多くのパソコン・プログラムが試みられてきましたが、いずれもがパソコンやインターネットなどのインフラ環境、また指導者の質と数の点から、高齢者である参加者の需要をプログラム提供側が満たしきれていないのが現状です。

−2つの社会問題を解決するために−

 高齢者へのICT利活用の促進、認知症予防の啓蒙と普及という2つの社会問題を解決するには、パソコン教室の活用が不可欠であるとわたくしどもは考えています。パソコン教室にはICT利活用の習得を支援する講師の存在、会場となる教室、パソコンやタブレット、インターネットなどのインフラ環境、何よりパソコン教室には、高齢者がすでに通学しています。これらのことや下記の表に示す関連性の面からも、パソコン教室の活用は認知症予防意識の向上と認知症になりにくい生活習慣の形成に効果的であると考えています。

 つまり、認知症予防の取り組みが全国的に広がっていくには、全国のパソコン教室が重要な役割を担うことが期待されているのです。

 

:認知症予防とパソコン教室の関連性

認知症予防で鍛えたい

の認知機能

パソコン教室で見込まれる効果
エピソード記憶

新しい機能を覚える

 →前回習った操作を思い出す

注意分割機能

人と接する、社会参加

→遠足や行事参加、人と会話する

計画力

手順を考える、逆算する

→作成手順を考える

習慣化  行動を促進する環境と仲間の存在

→週1回の通学